外国人労働者を考える(下)円安でも来日‥日本文化への憧れが動機に

外国人労働者にとっては、長期にわたる経済低迷や円安の進行で、日本自体が魅力のある国ではなくなっている。神奈川県内で多いベトナム人材も「採用は難しくなった」という声を聞く。
ある専門家は「ベトナムの若者が日本を敬遠するのは、技能実習生への人権侵害です。SNSでまたたく間に拡散され、そんな国には行きたくないと考える若者が増えている」という。雇う方も外国人を単なる安い労働力と見なしているところが多く残っていることを示す。
では何のために来日するのか。インドネシアから来日する特定技能人材の紹介事業を始めた横浜市の人材派遣会社社長は、こう指摘する。
「外国人が来日する目的が変わってきています。以前は出稼ぎ色が強かったのですが、今では他の国よりも稼げないと知っています。日本のアニメや文化に憧れてくるケースが多い気がします。女性にとっては治安も大きいようです」
稼ぐためではなく、日本という「文化圏」に憧れてくる。動機のこうした変化は、受け入れ側の企業にとっても、関わり方を根本から問い直すきっかけとなるはずだ。
働きやすい職場に人が集まる
こうした状況下で、外国人雇用で成功している企業がある。
重度訪問介護サービスを展開する横浜市内の企業は、フィリピンで無料のオンライン日本語学校を運営し、外国人ヘルパーをゼロから育成する体制を整えている。来日後の定着率は9割超を誇る。
社長は「円安の影響で外国人ヘルパーは韓国や欧州に流れています。そうした中で、外国人材を単なる労働者として見るのではなく『日本を選んでくれてありがとう』と"三顧の礼"をもって迎え、働きやすい環境を整備し、いかに給与を上げていくかを常に考えています」と話す。
具体的には、日本人以上の最低時給、祝日勤務の特別手当、夜勤手当、有給休暇、ボーナス、社宅、フレキシブルな勤務体系など、充実した福利厚生が定着率の高さを支えている。採用が決まればiPhoneを支給するという取り組みも口コミで広がり、外国人からの問い合わせが相次ぐという。
事例から見えてくるのは、日本人・外国人問わず、働きやすい職場には人が集まるということだ。
例えば、神奈川中央部のあるプレス加工業者では、現場をほぼ多国籍の女性が占める。ブラジル、ペルー、中国など計10カ国以上の在留資格を持つ女性を採用し、定着させている。
週1回や1日3時間からでも勤務可能で、社長は「飲食店のパート・アルバイトと同じ。『働く時間はあなたが決めてください』という発想です」と言う。やる気があれば正社員への道もある。
現場では国籍ごとに、日本語が話せる従業員が実質的なリーダーとなり、日本人とのパイプ役を担う。そのリーダーたちの紹介で、新たな人材も集まってくる。「男女、国籍、年齢を問わず、認められることで、誰でも成長できます。日本人は売り手市場ですが、外国人には『働きたい』というエネルギーがあります」と語る。
人手不足は今後、さらに深刻化する。外国人労働者への依存が高まるのは避けられない。だからこそ今問われているのは、外国人をどう「使うか」ではなく、どう「共に働くか」である。
「日本を選んでくれてありがとう」と、迎える側の意識も変えていくことが必要だろう。モンスターペアレントがいなければ就職もできない日本人の若者より、いい会社づくりができるかもしれない。
(総合情報誌「ニューリーダー」で連載中)







