中小企業の生成AI時代の人材育成 若手の「下積み」を、作業量から判断の経験へ

生成AIが資料作成や情報収集などの業務を担うようになれば、企業では、若手社員の育成方法も見直す必要が出てくることになりそうです。これまで新人が担ってきたデータ収集や資料作成などの「下積み業務」をAIが代替すれば、若手はどこで仕事の基礎や判断力を身につければよいのでしょうか。
一つの考え方が、「下積み」をなくすのではなく、その中身を変えることです。

AIに作業や仮説づくりを任せながら、若手自身はその出力を検証し、早い段階から顧客や意思決定層との議論に参加することができます。従来の「作業の場数」に代わって「判断の場数」を意図的に増やすことで、自ら考え、AIを使いながら仕事を進められる人材を育てる考え方です。
生成AI時代に求められる2つの人材像
AIが日常の実務に浸透する中では、定型作業を正確に行う能力に加え、AIを使って業務を設計したり、人や組織をつないだりする役割が重要になります。
まずは業務のデザイン職、いわば「AI共創の設計者」です。AIに任せる定型業務やリサーチと、人間が担う意思決定を切り分け、業務プロセス全体を再設計・運用する役割です。
もう一つが、やや逆説的ですが、組織と組織をつなぐ「人同士の共創」のデザイン職もまた、重要性を増すことになります。「AIと人間」「人と人」「組織と組織」をつなぎ合わせて仕事を進め、課題解決や価値創造に導く役割が、AI活用時にこそ不可欠になるといいます。
若手の「下積み」を作業から判断経験へ
これまで新人の下積みといえば、先輩の仕事を見ながら、データ収集や資料作成などの作業を繰り返し、時間をかけて仕事を覚えていく方法が一般的でした。
しかし、生成AIを使ってこうした作業の一部を短時間で処理できるようになれば、若手の経験の積ませ方も変える必要があります。
大手メーカーのDX担当者は「現在は情報がデジタル化され、AIを使えば、入社3カ月でもビジネスの課題や仮説を自動で作成できる」と話します。
若手にとっては、早い段階からAIを使って仮説を検証したり、意思決定層と議論したりする機会が、下積みとなるのです。資料作成などの「作業量」だけで経験を積むのではなく、「判断する経験」を増やすという発想です。
「判断経験」を意図的につくる
では、中小企業は若手の判断経験をどのようにつくればよいのでしょうか。
DX支援を手掛ける企業の幹部は、「AIが若手の階段の1段目(基礎作業)を奪うからこそ、経験への依存から『意図的な判断経験の設計』への転換が必要」と提唱します。
それまで基礎作業を通じて自然に得ていた経験を、別の形で補う必要があるからです。「AIが出した答えが正しいのかを検証する」「複数の選択肢から一つを選ぶ」「判断した理由を説明する」といった経験を、意図的に設けなければなりません。

別の方法は、新人自身にAIを使わせ、AIの成果物を評価させることです。
AI導入支援の企業の代表は、新人に「仕事のステップを細分化してAIに指示を出し、上がってきた成果物の品質をチェックさせる」ことを提唱します。
AIへ指示を出すには、仕事の目的を理解し、作業を細かく分解する必要があります。さらに、AIが作成した成果物に対して「何が足りないのか」「どこを直すべきか」を新人自身に判断させるのです。
つまり、自分が仕事を任せ、その成果物を評価する「部下」のようにAIを使うことで、仕事の品質を判断する基準を学ばせる考え方です。
中小企業の育成は「判断の場数」へ
生成AI時代の人材育成で重要になるのは、若手から下積みを取り上げることではなく、下積みの中身を再設計することです。
AIに仮説をつくらせる。若手がその内容を検証する。顧客や意思決定層との議論に早い段階から参加する。AIへ仕事を指示し、返ってきた成果物の品質を評価する。
こうした経験を意図的に増やすことで、従来の「作業の場数」とは異なる「判断の場数」をつくることにつながるのです。
(HUB-CONNe編集部)


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