生成AI時代の中小企業組織づくり 「指示待ち」を減らすには、まず「関係の質」から

今回は、少し視点を変えて、生成AIの活用に適した組織のあり方を考えてみます。
生成AIやAIエージェントの進化によって、資料作成やデータ集計などの作業を、短時間で処理できる場面が増えています。しかし、高度なITツールを導入しても、社員が上司の指示を待ち、自分から意見や提案を出さない組織のままでは、AIを十分に生かすことは難しいでしょう。
生成AI時代に中小企業が自律的に変化できる組織をつくるには、AIスキルや業務効率化だけでなく、人と人との「関係の質」を高め、社員が本音を出し、自ら考えて行動できる状態をつくることが重要になるといえそうです。
組織開発を支援するYURAGI DESIGN代表取締役の杉山誠氏と、U-ZERO代表取締役の三村真宗氏の知見から、AI時代の組織づくりを考える。
「結果の質」より先に「関係の質」を高める
米マサチューセッツ工科大(MIT)組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏は、「組織の成功循環モデル」を提唱しています。これに基づき、企業の組織開発を支援する企業の代表者は「組織の最小単位は、個人のスキル以上に、人と人とのコミュニケーション(関係性)にある」と指摘しています。
「多くの経営者は、PDCAのように『結果の質』を厳しく問うことからマネジメントを始めます。しかし、結果から入ると、関係性は冷え込み、思考は『やらされ感』に満ち、行動も受け身になってしまう。そうした悪循環に陥ります」

では、どうすべきか。「リーダーはまず、結果より先に、対話を重ねる『関係の質』を重視すべきです。関係の質が高まって初めて、自発的な試行錯誤やイノベーションが生まれます」。成果を求める前に、社員同士が意見を交わせる関係をつくることがポイントになる、というのです。
何かを提案しても否定される。それなら、余計なことを言わない方がよい‥。社員がそんなふうに感じる職場では、AIで仮説やアイデアを短時間で生み出せるようになっても、提案や議論にはつながりにくいでしょう。
この代表者は「まずは、意見を意図的に引き出すアクションファーストから始めることが重要だ」と強調します。リーダー側から意見を求め、社員が発言する機会をつくる。その積み重ねを通じて、「この場では意見を言ってよい」という関係性を形成していくのです。
場合によっては、仕事を停滞させてでも、社員の考えを引き出す場をつくることも、考えられるのです。
その際、リーダーは部下の意見をすぐに評価せず、「発言してくれてありがとう」と受け止めることに徹します。
とはいえ、意見を自由に言える状態をつくるだけでは、自律的な組織は育ちません。
十分に意見が出るようになった段階で、結果の数字だけではなく、振り返りを通じて自己をより良く変化させ続ける「アップデートする責任」がメンバーには求められます。「意見を言ってよい」という環境と、「自ら変わり続ける」ことに対する責任。その両方を組み合わせることが、自律型組織への移行につながるというのです。
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生成AI時代は若手の「下積み」も変わる
生成AIが資料作成やデータ集計など多くの作業を担うようになる中、若手社員の育成方法も変化することになるでしょう。
若手は、これまで時間をかけて担ってきた資料作成などの下積みを経験してきました。それに代わり、これからは「AIを使って仮説を早期に組み立て、実際の意思決定の場で議論する」経験を積ませる、という考え方です。

そこに求められるのは、「意図的な判断経験の設計」です。
AIの活用による作業時間の短縮から生まれた時間を、現場で判断し、意見を述べ、その結果を振り返る経験へ振り向けるのです。
経営者は「指示者」から「対話を生む人」へ
生成AI時代の組織づくりでは、経営者や管理職の役割も変わるでしょう。
指示を出し、その通りに実行されたかを管理するだけではなく、社員から意見を引き出し、異なる考えをつなぎ、組織全体が自ら変化できる環境をつくる役割が重要になってきます。
社員が意見を出せる「関係の質」をつくり、その上で自ら判断し、振り返り、アップデートする責任を持たせる。
AIによって作業の速度が上がる時代だからこそ、人と人との対話や意思決定の質をどう高めるかが、中小企業の経営と組織づくりにとっての重要なテーマになるといえそうです。
(HUB-CONNe編集部)


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