後編:中小企業経営者が備えるべき「取適法」の核心を総まとめ
前回は「中小受託取引適正化法」(取適法)の核心である価格協議の義務化について解説しました。後編では、施行後に企業の実務に大きな影響を及ぼす、適用範囲の拡大と支払い方法の厳格化という二つの重要な改正ポイントと、経営者が取るべき具体的な対応策を解説します。
経営者の注意点・具体策のポイントは?
取引当事者の適用範囲拡大
これまでの下請法では、取引当事者の資本金を基準に適用が判断されていましたが、会社の規模を正確に反映しきれない課題がありました。
取適法では、判断基準として、常時使用する「従業員の数」が追加されました。
これにより、製造委託などにおいて、これまで対象外だった事業者でも、従業員数が一定基準を満たす場合、新たに「委託事業者」として法規制の対象となる可能性が生じます。また、適用対象となる取引も拡大します。
- 特定運送委託:荷主が運送業者に自社製品の運送を委託する行為(自家利用)
- 金型・治具等:製品作成のための木型、治具等が規制対象物に追加
発注側の場合、取引先の従業員数を確認し、自社の取引が新たに取適法の対象となるか判断してください。
運送委託や木型・治具の委託についても、「親事業者」として、書面交付や支払期日の設定(受領から60日以内)など、四つの義務を新たに負います。
手形払い・手数料差し引きは禁止
中小受託事業者が確実に満額の代金を現金で受け取れるよう、支払い条件が厳格化されました。
- 手形払い:原則として全面的に禁止。代替手段も、手数料負担なく現金化できることが必須
- 振込手数料:代金から振込手数料を差し引く行為は、合意があっても減額として違反
手形を利用している場合は、直ちに現金払いへの移行を検討してください。また、振込手数料を差し引いている慣行がある場合は、全額を振り込むよう速やかに変更し、資金繰りへの影響を確認してください。
取引の適正化は企業価値の向上
取適法の施行は、不公正な商慣習を一新する機会です。違反した場合、企業名公表や罰則を受けるリスクがあります。法令順守はもちろん、サプライチェーン全体で適正な取引を行うことが、企業価値向上につながります。
取適法の違反は、公正取引委員会による勧告、企業名の公表、さらには罰則につながる重大なリスクです。この機会に、古い商慣習を改め、全ての取引先との関係を「対等」なものとして捉え直してください。


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