求人難の現場から(上)中小企業の採用に大手が‥市場の競合激化
「人が集まらない」「入ってもすぐに辞めてしまう」─。年間400社ほどの神奈川の中小企業を取材して回っているが、驚くほど高い確率で経営者から聞く言葉である。とはいえ、最近は勝手が変わってきた。信じられないケースも出てきている。
内定者の親から「辞退させてもらう」
ある会社では、内定を出した瞬間、両親から連絡が入った。「おたくは上場企業ではないので、息子の内定を辞退させていただきます」。本人の意思に関係なく、一方的に告げられた。
別の会社では、人事異動があると両親が会社に怒鳴り込んできて説明を要求し、最終的に退職に至ったケースもある。
いわゆる「親ブロック」である。成人した子どもの就職先に親がここまで介入する時代になったのかと、複雑な思いになる。
最近はこんな話を聞いた。以前から取材している、ある金属加工会社のことだ。
その会社は若い人材の獲得を目的に、あえて遠く離れた地方に事業所を出した。社長は地元の工業高校に何度も足を運び、「卒業後は上京しなくても地元に就職できます。地方創生にもつながります」と説明して回った。無論、学校側も賛同し、卒業生を推薦する予定だった。
ところが、同じことを考えた大手企業が、その地域に事業所を新設。学校側も生徒の両親たちも「神奈川の中小企業より、テレビCMをやっている有名企業の方が安心」だとして、そちらに流れてしまったという。
今や人手不足は中小企業だけの問題ではない。大手企業も同じ課題を抱えており、中小企業と直接競合する時代になっているのだ。
人手不足につけ込む求職者まで
一方、ここ最近、中小企業の人手不足につけ込み、悪意を持って入社してくる人材がいるという。
電子機器の設計・製造を手掛ける会社は、有名企業での勤務経験があるベテラン社員を中途採用した。
ところが、入社後に態度が豹変。周囲と協調せず、指示にも従わない。しかし自主退職はしない。
会社側は対応に苦慮し、結局、多額の解決金を支払って退職してもらったという。
社長は「最初からお金目的で入ってきたのでは。知り合いの会社でも同じようなケースを聞いた」と明かす。
実際、こうした類いの話も数社から聞いている。焦って採用すると、かえって組織が疲弊する。この教訓は、多くの中小企業経営者に共有されるべきだ。
=次号に続く
(総合情報誌「ニューリーダー」で連載中)







