求人難時代の人員定着を考える 中小企業は「職場の魅力」「成長の機会」づくりから
相模原市内にある自動車整備工場の社長は、自らの経営を「心配り経営」と称する。過酷な仕事内容からか、離職率が高いとされる自動車整備業界だが、離職率はほぼゼロを実現。社長は「カギとなるのは、『安定』と『希望』の2つを示してあげることです」。
給料より「安定」「希望」
「安定」とは、福利厚生の充実。「希望」を持ってもらうためには、資格取得などを奨励する。
「給料が高くないと人が集まらないと言う人もいますが、それは違うと思います。 本人が将来、この業界で生きていけるかの希望が描けるかどうかです」
資格を取得した従業員には、その場で相応の現金を手渡す。勉強にかかる費用もすべて会社負担だ。「個人の貴重な時間を使って勉強しているので、会社として報酬を渡すのは当然です」。従業員のスキルが上がれば、結果として生産性も高まる。
従業員に対する“見えない手当て”にも配慮する。 頑張っている従業員には、社長自らが買い出しに行き、飲み物やアイスクリームなどを頻繁に差し入れる。
社長は誰よりも早く出社し、遅く帰る。社長が外でどんなに頑張っていても、従業員には、会社にいる社長の姿しか見えない。だから残業している従業員がいれば、自分も残って進んでねぎらうという。
「中抜け」もOKの会社
勤務中に堂々と「中抜け」が許される企業もある。
段ボールなどのパッケージ製造を手 掛ける横浜市内の企業は、職種を問わずフレックスタイム制を導入している。
といっても、 ただのフレックスではない。本人の生活スタイルに応じ、どの時間でも出勤可能。しかも1日に決められた労働時間である「トータル8時間」を満たせば、勤務中の「中抜け」もOKだという。
子育て中だったり、家族が通院中だったりしても、職場を離れて用事を済ませてから再び戻れば、1日の勤務として成立する。「人は宝です。ストレスフリーの職場を目指しています」と社長は語っていた。
働きやすい環境整備を
帝国データバンク横浜支店が2024年11月に発表した「神奈川県の人手不足に対する企業の動向調査」(有効回答企業数は565社)によると、神奈川の企業の実に55.7%が「正社員が不足」と感じているという。この水準は2006年5月の調査開始以来、過去最高だとしている。
人手不足感が強まる中、地域の中小企業は、それぞれの事情に応じた独自の工夫で定着に取り組む。が、それでも人手不足の波は止まらない。規模拡大の時代は終わりを迎えつつある。
今後の中小企業に求めら れるのは「採用」の前に「職場の魅力」をどう作るかだ。大手企業による引き抜きや転職 サイトが浸透する中では、なおさら重要性を増している。
従業員にとって働きやすい環境が整えば、結果として人材不足の課題も少しは和らぐ。もちろん生産性向上も急務だ。給与や待遇、福利厚生…。それ以外にも、やりがいや成長の機会をいかに提供できるかどうかが、将来を左右するだろう。







