価格転嫁を考える(上)製造業は儲からない?調達の構造的課題は
このところ取材先の廃業や倒産が続いている。特に、日本のものづくり産業の屋台骨を支える加工業(金属加工や樹脂加工など)、いわゆる町工場の景気がどうやら芳しくない。
ある工業団地では、ここ数年で入居する17社中5社が、廃業もしくは身売りをした。まさに異常事態である。
取材先の中には「もはや製造業なんか儲かりません。メーカーだったり、独自技術を持っていたりすれば、まだ生き残れますが、自分たち加工屋は厳しいと思います。当然、息子にも継がせられません」と吐き捨てる社長が、最近では頻繁に出てきたと感じている。
確かに、先行きに希望が持てない中で「まだ財務内容が健全なうちに…」、あるいは「今なら土地が高く売れそうだから…」と、会社をたたむことを選ぶ気持ちも、同じ経営者として分かる。最近では、こうした廃業のケースは「あきらめ型倒産」と呼ばれているという。
「安い調達」は発注先の社内評価
先日、機械加工業の関係者と時間を共にする機会に恵まれた。廃業を選んだという。
このところの原材料費や人件費の上昇に加え、大手企業からは相変わらず、低価格での受注を余儀なくされていた。「仕事をすればするほど、赤字を垂れ流し続ける状態です。こんな不条理ってありますかね。そこには、長年黙認されてきた日本の製造業の病があります」と関係者は明かした。
最近では政府の後押しもあり、至るところで「適正価格」という言葉を聞くようになった。
が、異なる実態もある。この企業の場合、取引先となる大手製造業の資材・調達部門は値上げに応じてくれるものの、それもほんの一瞬。担当者が頻繁に変わり、その都度、値下げを要求されるという。今の資材担当者と信頼を重ね、ようやく値上げに成功しても、担当者や調達トップが変わるたびにリセットされてしまうのだ。
このサイクルが繰り返されていけば、儲かるはずもない。「結局、大手企業の場合、できるだけ安く調達すれば、担当者は社内で評価されます。だから少しでも安く…と躍起になります。こうした構造がある限り、日本の製造業はよくなりませんよ。それこそが病です」と関係者は語っていた。
付記するが、値下げ要求は当然、中小企業からさらに下請けとなる小規模企業へと連鎖していくのは、いうまでもない。
帝国データバンク横浜支店が発表した神奈川県内企業の価格転嫁に関する実態調査(2025年7月分)によると、コスト上昇分を販売価格に転嫁できた割合を示す「価格転嫁率」は37.7%となり、前回調査(2025年2月)の38.6%から0.9ポイント低下した。2調査連続で低下し、4割を下回る水準が続いている。コストが100円上昇した場合、37.7円しか販売価格に反映できず、残り6割超を負担していることを示している。
=次号に続く
(総合情報誌「ニューリーダー」で連載中)







