「感謝ある尽くし合い」が生む成長 人が辞めない税理士事務所
西村直樹税理士事務所

経営理念は「感謝ある尽くし合い」。採用費ゼロ・縁故100%、従業員の自発退職ゼロ。市原市の税理士事務所が実践する、中小企業のための人的資本経営のヒント。
開業5年、従業員の自発退職ゼロ。千葉県市原市の西村直樹税理士事務所は、経営理念「感謝ある尽くし合い」を軸に、採用費ゼロ・福利厚生重点投下という独自の人材戦略で成長を続けている。中小企業の人手不足が深刻化する中、税理士事務所の現場から見えてきた「人が辞めない組織」の仕組みとは。
経営者と従業員の双方向の約束
「うちの経営理念は『感謝ある尽くし合い』です」。西村直樹氏(48)はそう語る。「尽くす」には全力を尽くす、手を尽くす、相手のために尽くすと、複数の意味がある。「従業員には事務所の発展のために尽くしてもらいたい。私は逆に、従業員が働きやすい場を作ることに尽くす。そこをお互いにやっていきたい」。
この理念は人材育成の方針にも表れている。従業員は全員が未経験者。「ミスがあっても叱ることはしない。仕組みを教える」。思い切って仕事を任せ、最終チェックは所長が責任を持つ。その結果、「他の事務所と比べても倍以上のペースで成長してくれている」という。
一方、顧客についてはあえて選ぶ姿勢を貫く。「対応が難しいお客さんだと従業員にストレスがかかる。そういう場合はお断りすることもある。売上は減るが、従業員を守ることを優先しています」。顧客は増やせても従業員は簡単に増やせない――その現実が、人を守る経営判断を後押しする。
「小さな仕掛け」が組織を変える
西村氏が力を入れるのは、日常に溶け込んだ「小さな仕掛け」の数々だ。月1回のミーティング後には全員がルーレットを回し、出た金額(3千円〜1万円)をその場で現金支給する。月1回の整体師派遣でデスクワークの疲労をケアし、朝と15時にはAlexaが自動でラジオ体操を流す。「動きのキレや大きさで、なんとなく従業員のコンディションが見えたりする」。声をかけるきっかけになるという。
半年に1回の「お散歩ミーティング」では、従業員と1対1で近所を歩きながら対話する。事務所改善提案制度では、どんな提案にも賞金を出す。「事務所にいる時間は自宅より長いかもしれない。だったら自分で働く場所をより良くした方がいい」。体調不良時には年次有給とは別に年間12日の特別有給を設ける。採用には一切お金をかけず、全員が縁故採用。「採用にお金をかけないで、入った後の教育や福利厚生にお金を使う」。その好循環が、自発退職ゼロの実績を支えている。
感謝は「謙虚さのバロメーター」
「感謝できるということは、自分自身が謙虚じゃないとできない。感謝できなくなっている時は自分が傲慢になっているということ」。西村氏は感謝の心を、経営者としての自己点検の指標と位置づける。こちらが感謝を示せば、相手からも感謝が返ってくる。その循環が組織を強くする。
TKCの「巡回監査士」資格試験の際、従業員から「土日みんなで勉強したいので事務所に来ていいですか」と申し出があった。「職場が嫌な場所だったら、わざわざ来たくないじゃないですか」。経営者が従業員のために工夫を重ねれば、従業員は自ら動き出す。その実感が、西村氏の確信を深めている。「年配の人が若い人から学ぶことがものすごく多い。上は下から学び、下は上から学ぶ。お互いにそういう姿勢を持つことが大事です」
(ちば経済産業新聞)
企業情報
- 企業名
- 西村直樹税理士事務所
- HP
- https://ichihara-chiharadai.tkcnf.com/
- 住所
- 千葉県市原市ちはら台





.jpg?fm=webp)

