HUB CONNe
NEW
#事業承継#倒産

広がる”静かな事業撤退” 葛藤の果てに‥倒産件数の7倍超


FacebookxLINElinkedin
広がる”静かな事業撤退” 葛藤の果てに‥倒産件数の7倍超

これまでも触れたが、ここ最近は取材先の廃業が絶えない。長年にわたって取材してきた経営者から「閉めることにしました」と聞かされるたび、胸が詰まる。最盛期に取材した時のことを思い出すと、なおさらだ。

受注が好調で設備投資に踏み切った時期、新しい加工技術に挑戦していた時期…。あの頃の熱気を知っているだけに「廃業」という言葉を聞くと信じられない気持ちになる。

優良企業も「体力あるうちに」

「このまま続けていても製造業には将来はない。だったら土地が高く売れるうちに廃業するほうが得だ」。以前、取材したある企業の社長の言葉が頭をよぎる。

冷徹な判断に聞こえるかもしれない。しかし人生100年時代。経営者として自身の今後の人生を考えれば、当然の選択かもしれない。

実は廃業を選ぶ企業の中には、優良企業や、アナログながらも高度な技術を持った企業が少なくない。黒字のうちに、体力があるうちに決断する経営者が増えているのだ。後継者がいない、あるいは後継者候補がいても、継ぐことを辞退される。そんなケースも珍しくなくなった。

「余計なことをしないで」

つい先日もそうだった。ある中小専門家と談笑していると、その人の携帯電話が何度も鳴った。出ても構わないと言った。「もう決めたんです。余計なことをしないでください」という声が漏れてきた。聞くと、声の主は地元では名の知れた町工場の奥さんだという。

廃業してしまうのはもったいないと、後継企業探しに奔走している最中だった。しかし、当事者にとっては「もう決めたこと」なのだ。その人は「本当にもったいない」と、唇をかみ締めていた。

こうした現実を裏づけているデータもある。帝国データバンク横浜支店の調査によると、2025年に神奈川県内で休業・廃業、解散した企業(個人事業主を含む)は4117件。過去10年では2番目に多い水準だ。同年の県内企業倒産件数(法的整理)は559件だったから、休廃業・解散件数は倒産件数の約7.4倍に上る計算となる。

同支店によると、物価高や人件費などのコスト上昇が続く中、経営体力に余裕があるうちに事業を畳むケースが目立つという。

注目すべきは、この4117件という数字の中に「倒産」は含まれていないという点だ。資金繰りに行き詰まって倒れたのではなく、販売不振や放漫経営でもない。自らの意思で静かに閉じた企業が、これだけあるということである。

一つひとつの廃業の裏には長年の技術の蓄積があり、取引先との信頼関係があり、地域の雇用がある。数字に表れない「静かなる撤退」が、各地で確実に進んでいるのだ。

(総合情報誌「ニューリーダー」連載中)

FacebookxLINElinkedin

執筆者紹介

千葉 龍太

千葉 龍太

代表/編集長

2000年、朝日ニュースターに入社し報道制作本部。2001年日刊工業新聞社入社、相模支局記者、本社編集局第一産業部記者、第二産業部記者を経て、神奈川新聞社に転職。整理部記者、経済部記者を経て、2013年に「かながわ経済新聞」を創業。現在に至る。文部科学省「市町村アカデミー」講師(プレスリリース書き方講座)、相模原商工会議所1号議員(工業部会)、22年度産業功労賞受賞、一般社団法人神奈川ニュービジネス協議会理事(前プロモーション委員長)、NPO法人・ベンチャー支援機構MINERVA理事。

こちらの記事も読んでみる


産業動向の最新情報を知るなら

神奈川県の企業に取材した最新情報を
メールで配信!
記者が取材した「最新記事」を
メールでお届けします!

中小企業の協力・
協業マッチング受付中!

記者による圧倒的な取材力を活かした
企業マッチングサービス(会員企業限定)を
ぜひご利用ください。

「企業様の声」

成長には連携が欠かせない時代。HUB-CONNeは、多様な情報を通じて新たな機会を生み、相互に価値を高める連携を実現できるプラットフォームです。

株式会社TNPパートナーズ

代表取締役社長・呉 雅俊氏

HUB-CONNeは新たな出会いを生むプラットフォームだと感じています。地域企業の可能性を広げ、挑戦や共創を後押しする取り組みに期待しています。

株式会社タシロ

代表取締役社長・田城功揮氏

かながわ経済新聞の広いネットワークのメリットを享受でき、当社事業の顧客拡大や関連する技術、補助金情報などの機会を提供頂いています。

南開工業株式会社

代表取締役・中村仁氏

ピッチコンテストや勉強会を通じて他業種とのつながりが生まれ、新たな事業計画や協業へと発展しました。

株式会社シェノン

代表取締役・西條英之氏

かながわ経済新聞を通じて官公庁との関係構築などが実現し、業績とブランディングに大きな成果をもたらしました。

株式会社バイオクロマト

代表取締役・木下一真氏

記事掲載をきっかけに取引先の紹介や新たな出会いが生まれ、地域に根ざした媒体として高い価値を感じています。

株式会社スリーハイ

代表取締役・男澤誠氏

挑戦する企業の情報を手軽に得られるだけでなく、経営者の姿勢から学びや刺激を受けられる貴重な場です。

株式会社ミズキ

代表取締役・水木太一氏